『北史』などによると、「柔然」という民族名は、車鹿会という族長が自ら「柔然」と号したことに始まったという。また、『魏書』・『北史』・『南史』などでは「蠕蠕(ぜんぜん)」、『宋書』・『南斉書』・『梁書』などでは「苪苪(ぜいぜい)」、『周書』・『隋書』などでは「茹茹(じょじょ)」、『晋書』では「?蠕」と表記されるのは、「柔然」をさらに中国側で別の不好の文字をもって異字訳したものである。「蠕蠕」・「?蠕」と虫に関する文字を用いているのは、彼らの氏族トーテムの関係と侮蔑的な意図から特に北朝の人々が用いたものであり、柔然人自身が自分たちを指す場合と、侮蔑的な意図がない場合は「茹茹」・「苪苪」と記されている。これらの原音は不明だが、いくつかの説が存在する。
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白鳥庫吉説…モンゴル語の「tsetsen(賢明)」であるとした。
藤田豊八説…モンゴル語の「jušun(法則・礼儀)」であるとした。
H.W.Haussing説…「柔然」は自称ではなく、北魏人が彼らを外国人として、アルタイ語の「jojin(異国人)」と呼んだものの漢字音訳であるとした。
P.Boodberg説…アルタイ語で、あるヨモギ科の植物を指す「javčan」であるとした。
ここで、Boodberg氏のヨモギ説であるが、『資治通鑑』巻八十一太康六年注引『何氏姓苑』において、「宇文氏は炎帝の出自であり、その後、草の効能を試したため、鮮卑語で草をいう『俟汾(しふん)』から、俟汾氏と名乗り、その後訛って『宇文氏』となった」とあり、『魏書』序紀では、「拓跋」の語源を「土を謂いて托となし、后を謂いて跋となし、故に氏となす」とあるように、族名が草や土から名づけられるケースがあり、柔然もこの類だとすれば、「茹茹」・「苪苪」と草に関する文字を用いているのにも説明がつき、可能性は高いといえる。